2018/01/29

【今日の言葉154】安易に目先の問題に飛びつくな

「宙ぶらりん」の状態に耐えてこそ、たどりついた結論が確固たるものになる。
(中西輝政「本質を見抜く考え方」より)

 私は「答え」や「道具」を教えるタイプのコンサルではありません。まず徹底的に現状の分析と課題の抽出を行います。しかもそれをコンサルタントが行うのではなく、お客様(技術リーダー格、またその候補の方)にやっていただきます。当方はそのお手伝いをするだけです。コンサルが企業さんの問題点を決めつけて指摘したりはしません(視点やヒント、道具を与えることはしますが)。なので、場合によっては本質的な問題が見つかるまで何か月もかかります(最初からそういうスケジューリングをしてます)。お客様は悩んで、考えつくすことになります。「気づく」までやります。

 当然、依頼した企業の責任者の方は「まだ問題に着手しないのか」、「まだ成果がでないのか」とやきもきします。こちらもその雰囲気を感じて、問題に見える点を指摘して、さっさと解決に向かいたい衝動にも駆られます。成果が出なければクビの世界ですから。

 しかし、信念をもってこの「宙ぶらりん」の状態に耐えないといけません。現状分析や課題抽出のところを中途半端にやると、本当の「登るべき山」に登れないからです。間違った山に登ったところで成果は出ませんし、出たとしても小さな成果が一度きりです。最初から道具を用意してそこに当てはめる、というのもモッテのほかです。

 また、コンサルに指摘された問題を、指導された方法でやるというのは、「やらされ感」しか生まれません。その時はやっても(やったふりをしても)、そのあとはやらないでしょう。自分たちの目で見て考えた「本当の問題」について、自分たちが主体的にやる気にならなければ、実行はおぼつきませんし、リピートや定着につながらないと考えているのです。課題が確定してから、道具のことを考えればよいのです。どのような課題にも対応できるように、コンサルは道具の引出しは多数持っておく必要があります。

 イノベーションを阻害するのは、短期的成果を求める経営者である、とはよく言われることです。お手伝いするコンサルの側も気を付けなければなりません。今お手伝いしている企業様でも、じっくりと「膿を出している」ところです。

※個別課題の相談はスポットコンサルでお受けしています。


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2018/01/27

【今日の言葉153】一人で過ごす時間の重要性

静かに休日を過ごすと、嫌でも自分と向き合わざるを得ない。
(ユダヤの聖典「タルムード」より)

このあとに、こう続きます。
「それができない人ほど自分を忘れるために忙しく遊ぶことになる。それでは自分を創ることはできない」

ぼうっと何もしないという過ごし方は苦手ですが、一人で本を読んだり、写真を撮りに旅に出たり、神社を巡ったり、ふらりと酒場に入ったりするのは好きです。本を書いたり創作したりする作業も個人プレーの方が得意で合作は苦手。友人と会うときも二人のことが多い。社交的に見られますが、不特定多数の方と群れて過ごすのはあまり得意ではないですね。


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2018/01/19

2種類の誤りがある場合のデジタルSN比とオッズ比は同一(3)

(前投稿からのつづき)
分離システムの評価指標は、有効成分(または有害成分)について排出口#1と#2で経済的な差があっても変化しないことが望ましい。経済的な差に対する校正は分離システムのSN比とは別の問題だからである。

※寄与率ρを用いて評価する、デジタルのSN比は、システムの品質の問題と、校正の問題が分離されていなかったので、田口氏自ら間違いを指摘し、修正した経緯がある。
「実験計画法第三版」24.2.4節(p.684)
「SN比の計算問題は、式(24.27)で解けたと思ったのが筆者の大きな誤りであった。式(24.27)には、校正問題すなわちソフトウェアの考慮が欠けていたのである(以下略)」

ここで、排出口#1に気泡Bが混ざるのは品質上の損失が大きい(それを防ぐのがこの分離システムだから)が、排出口#2に液体Aが混入する損失は小さいとしよう(収率が少し下がるだけだ)。

排出口#(回収側)において、液体Aが一単位得られる利得をa、気泡Bが一単位混入する損失をbとする(0<a<b、イメージ的にはa<<b)。排出口#2(廃棄側)については、液体Aを失う損失は前記の利得a(の消失)で、気泡Bを回収できる利得は前記の損失b(の救済)で表現されている。

オッズ比による利得/損失比
ηT''=10log[(a*yA1*yB2)/(yA2*b*yB1)]^2
  =10log(a/b)^2+10log[(yA1*yB2)/(yA2*yB1)]^2  (db)

デジタルのSN比による利得/損失比
ηTa=10log[(a*yA1*yB2)/(yA2*b*yB1)]^(1/2)
  =10log(a/b)^(1/2)+10log[(yA1*yB2)/(yA2*yB1)]^(1/2)  (db)

いずれも経済性に関係する第1項の成分だけがSN比に加えられるだけで、a,bの値によってSN比の相対比較には影響をおよぼさない。すなわち、校正(損失を最小にするための許容差設計)とは独立した、システムの品質評価の尺度になっている。

なので、システムを改善する際(パラメータ設計で最適水準を選ぶ際)には、統合されたこれらのSN比をそのまま使用してよいことになる(利得と損失のSN比を比べてトレードオフを取る必要はない)。

これらの式では損失金額を計算するときに、真数部[ ]^n が金額に比例するようにもとの単位系を調整するなど、留意する必要がある。

最後に注記しておくと、先の細川氏の報文でも述べられているように、yB1=0(回収側の気泡を0)を目標とした場合、これは校正の問題ではなく、高度な分離システムの品質改善問題である(報文では「開発活動」と言っている)。校正で可能なのは、一定の分離システムの品質において、上記の利得と損失のバランスを簡単な手段(制御因子)で調整することのみである。

【まとめ】
・オッズ比と2種類の誤りがある場合のデジタルのSN比(=エネルギー比型SN比)は、比例定数を除いて等価である。
・これらのSN比は、原料比の影響を受けない。
・これらのSN比は、校正(経済性を加味した調整)の影響を受けない。

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2種類の誤りがある場合のデジタルSN比とオッズ比は同一(2)

(前投稿からのつづき)
SN比は、分離システムの評価であるので、原料比yA:yBの変動に影響を受けてはならない。ここでは簡単なデータ例で検証してみよう。

液体Aは、有効成分yA1:有害成分yA2=9:1に、気泡Bは有効成分yB2:有害成分yB1=5:5に分離できる品質をもったシステムを考える。このとき、下記のように原料比が変わったとする。

Case1
                                    排出口#1 排出口#2
液体A yA=100    yA1=90   yA2=10
気泡B yB=100    yB1=50   yB2=50

Case2
                                    排出口#1 排出口#2
液体A yA=100    yA1=90   yA2=10
気泡B yB=10      yB1=5     yB2=5

オッズ比ηT’’、デジタルのSN比ηTaとも、真数部に(yA1/yA2)*(yB2/yB1)をもっているので、分離品質yA1/yA2とyB2/yB1(9:1と5:5)が一定であれば、原料AとBの比が変化しても、SN比は不変である。

オッズ比
Case1  ηT''=10log[(90*50)/(10*50)]^2=10log81  (db)
Case2  ηT''=10log[(90*5)/(10*5)]^2=10log81  (db)

デジタルのSN比
Case1  ηT''=10log[(90*50)/(10*50)]^(1/2)=10log3  (db)
Case2  ηT''=10log[(90*5)/(10*5)]^(1/2)=10log3  (db)

いずれのSN比も、原料比yA:yBの違いによって、品質評価の影響を受けない。

次の投稿で、経済性について考えてみよう。

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2種類の誤りがある場合のデジタルSN比とオッズ比は同一(1)

久々にSN比の数理に関する投稿。

2018年1月号の品質誌(日本品質管理学会誌)に、リコー細川氏による、分離機能(液体と気泡の混合物を分離したい場合)のSN比について論じられている。

細川, 佐々木:”開発活動に適した分離機能の評価方法と実験方法", 「品質」, Vol.48, No.1, pp.112-116, (2018).

この論文に対する評価ではなく、以前論じたエネルギー比型SN比とデジタルのSN比の関係、それにオッズ比について備忘録として残しておきたいという意図である。

原料である液体Aと気泡Bを処理して、排出口#1からは液体Aだけをだきるだけ多く回収したい。排出口から#2からは理想的には気泡Bだけが出てくるとよい。

データセットとして以下を考える。
                       排出口#1 排出口#2
液体A yA    yA1   yA2
気泡B yB    yB1   yB2

データは単位量(例えばℓ)の倍数と考えていただきたい。
すなわち液体Aは、yA1:yA2に分離され、気泡BはyB1:yB2に分離されるという機能である。

細川氏の論文に提示されているSN比はオッズ比と呼ばれるもので、情報通信(1を1と伝え、0を0と伝える機能)の品質や、検査などの判別性能を評価するのに用いられてきたものである。情報の判別も、材料の分離も、本質的に同じ評価ということである(つまりエントロピーの大きい入力をエントロピーの低い出力に変換できればそのシステムの品質が高いということだ)。

さて、オッズ比ηT''(記号は前論文にならった)では、

  ηT'=10log[(yA1/yA2)/(yB1/yB2)]^2=10log[(yA1*yB2)/(yA2*yB1)]^2 (db)

となる。
対数の中身の分子(yA1*yB2)が有効成分、(yA2*yB1)が有害成分であることは、データの定義から明らかである。

この式の意味は、田口玄一氏によって修正された2種類の誤りがある場合のデジタルのSN比とほぼ同意である(詳しくは、拙書「エネルギー比型SN比」のp.70~を参照)。
Aの分離率をpA=yA1/(yA1+yA2)、Bの分離率をpB=yB2/(yb1+yB2)とすると、SN比はこれらのオメガ変換値の平均(db単位で平均=和を取ること)で、

 ηTa=[10log(pAのオメガ変換値)+10log(pBのオメガ変換値)]÷2 (db)
   =10log[(yA1/yA2)/(yB1/yB2)]^(1/2)

オメガ変換値が、エネルギー比型SN比と等価であることは、前の投稿でも示した。

ηT''とηTaは本質的に同じ式である。logの[  ]部が2乗されるか(デシベル値が2倍になるか)、1/2乗されるか(デシベル値が1/2倍になるか)の違いだけで、相対比較を行う分には本質的な違いはない。

つまり、オッズ比もエネルギー比型SN比と完全に整合が取れているということである。

次の投稿で、これらの指標が原料比yA:yBに依存しないかどうかについて考えてみよう。

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2018/01/18

「エネルギー比型SN比」無料レポートリリースのお知らせ

株式会社ジェダイトのホームページより、かねてより「これでわかった!超実践品質工学」の無料レポートを請求できるようになっておりましたが、
このたび「エネルギー比型SN比」(20ページ)が合わせて入手できるようになりましたので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

ご請求はホームページの「お問い合わせ」の特設フォームから!

「これでわかった!超実践品質工学」
#01 ~早い段階で”未来の品質”の見える化を!~
#02 ~ここが問題!従来の試験方法~
#03 ~「機能性評価」で「より早く、より速く」品質の評価を~
#04 ~機能定義のコツ教えます~
#05 ~あえて「悪くなる」条件を作り出すノイズ因子~
#06 ~SN比は意味を理解して、ツールで使いこなす~
#07 ~機能性評価の使いどころと効果~

「エネルギー比型SN比」
1. はじめに
2. 技術評価におけるSN比
2.1. 従来のSN比
2.2. 従来のSN比の課題(1) ~信号の大きさによる影響~
2.3. 従来のSN比の課題(2) ~データ数による影響~
2.4. 従来のSN比の課題(3) ~個別的な計算方法~
2.5. 従来のSN比の課題(4) ~計算の複雑さ(使用面、教育面での困難性)~
3. エネルギー比型SN比
4. エネルギー比型SN比の検証
4.1. 従来のSN比の課題(1) ~信号の大きさによる影響~
4.2. 従来のSN比の課題(2)~データ数による影響~
4.3. 従来のSN比の課題(3) ~個別的な計算方法~
4.4. 従来のSN比の課題(4) ~計算の複雑さ(使用面、教育面での困難性)~
5. おわりに

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2018/01/07

自分の強みを知る(2)

240もの質問に答えることで、自分の強みを24種類の中からランク付けして知ることができます。診断方法など詳しくは以前の投稿を参照。

で、今回3年ぶりに実施してみました。
1位の楽天主義・未来志向は変わらず首位!(笑)
「You believe that the future is something that you can control.」というフレーズはいいですね。

3位の独創性・創造性、4位の学習への愛も前回5位までに入ってました。
それ以外では、2位に感謝、5位にユーモア・遊び心がランクイン。なるほど、なるほどという感じです。心に少し余裕ができたのかもしれません。

時々、心境の変化を立ち止まって見てみるのもよいでしょう。

Your Top Strength
Hope, optimism, and future-mindedness -
You expect the best in the future, and you work to achieve it. You believe that the future is something that you can control.

Your Second Strength
Gratitude -
You are aware of the good things that happen to you, and you never take them for granted. Your friends and family members know that you are a grateful person because you always take the time to express your thanks.

Strength #3
Creativity, ingenuity, and originality -
Thinking of new ways to do things is a crucial part of who you are. You are never content with doing something the conventional way if a better way is possible.

Strength #4
Love of learning -
You love learning new things, whether in a class or on your own. You have always loved school, reading, and museums-anywhere and everywhere there is an opportunity to learn.

Strength #5
Humor and playfulness -
You like to laugh and tease. Bringing smiles to other people is important to you. You try to see the light side of all situations.

自分の強みを知る(2015年2月調査)
https://tsuruzoh-qe.blogspot.jp/2015/02/blog-post_9.html


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2018/01/05

品質工学活用の前に統計的手法の習得は必要か

あるメーカー様より以下のような質問があり、他の方にも役立つFAQだと判断しましたので、Q&A方式で紹介しますね。

Q.
品質工学を社内で活用・推進するにあたり、そのベースとして統計的手法の習得は必須なのでしょうか。

A.
おそらく、「品質工学の前に統計的手法を」という意見の背景には、
「品質工学とは、直交表を用いてとったデータを高度な統計解析によって“料理”し、有益な知見を得るための手段」
との認識や、実験計画法との混同があるのではないかと推察されます。

結論から言えば、ご質問の順番にこだわる必要はありません。「統計的手法→品質工学」という段階的なものではなく、これらは両輪、相補的なものであると考えます。仕事の内容によってどちらかに重点を置く場合もあるでしょう。

品質工学(特に弊社が推奨する超実践品質工学)は、統計的な考え方ではなく、
 ①技術的な考え方(機能定義)と、
 ②お客様の使用条件・環境(ノイズ因子)をベースに、
品質の見える化・評価方法について、効率的な新しい切り口を与えるものです。それによって、開発設計の効率化と、新しい技術についての着想を得るためのものです。

よって統計的手法は、品質工学“活用“のベースとはなりません。
(SN比の計算もごく初歩的なもので、極論を言えば、Excelで計算しても品質工学の本質を損なうことはありません)

一方で、開発設計における因果関係の分析や、製造工程管理、開発・製造中の不具合解析を行う上では統計手法の知識が必要となります。

つまり、
 統計手法=データが“どうなっているか”を数学的に表現する
 品質工学=どうすれば効率的なデータを取れるかを技術的に考える
と言えるでしょう。

世の中の品質教育で「統計手法→品質工学」のような段階的な体系になっていることが多いですが、これは、統計手法の上級編として「実験計画法」が位置づけられることが多く、その類推から品質工学が統計手法の上級編と誤解されるのではないでしょうか。

弊社では統計的手法と品質工学(と信頼性手法)をあわせて「データエンジニアリング」と言っており、目的に応じて使い分けたり組み合わせたりすることが必要と考えております。hコンサルなどのご興味がありましたら、下記のリンクをご参考ください。

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