2017/03/23

【限定10名様】テクニカルミーティング(4/26(水)@大阪本社)

*** 満席となりました。お申込みありがとうございました! ***
(4/10 10:00更新)



 昨日、田口伸先生の「タグチメソッド入門(2日間コース)」の初日に、飛び入り参加してきました。軽妙な語り口で、見習うべき点が多かったです!もちろん、そのあとの懇親会も盛り上がりましたよ!

 さて、第3回のジェダイト テクニカル・ミーティングは、製造業への品質工学活用のための阻害要因である「7つの壁」とその壊し方をテーマとします。この種のセミナーはノウハウの塊のため、これまでほとんど開催されることはありませんでした。

 品質工学や設計・開発の社内コンサル、推進者、研修担当、事務局の方必見です。企業への品質工学導入は、品質工学を使うことを目的にしてはうまくいきません。開発プロセスの課題や目的を共有した上で、設計・開発現場で実践できる方法で導入を図る必要があります。そこに「超実践品質工学」がお役に立ちます。

Face to Faceを大切にしたいと思いますので、<限定10名様募集>とさせていただきます。この機会をお見逃しなく!

品質工学導入のための「7つの壁」とは?
 1.そもそも、なぜ品質工学が必要なのかわからない。
 2.直交表実験(18モデルもの試作実験)を実施する時間がない。
 3.考え方や用語がとっつきにくい。
 4.機能が定義やノイズ抽出方法を、体系的に教えてもらえない。
 5.統計の計算やデータ解析が難しそう。
 6.成果がうまく示せない。
 7.一過性の活動に終始して、継続的な活動や定着につながらない


4月26日(水)13:30~16:30 ジェダイト大阪本社にて。
参加費は10,800円(税込)です。
みなさまとの積極的な議論を楽しみにしています。

詳細は、株式会社ジェダイトウェブサイトをご覧ください。
本ブログのお問い合わせフォームから、下記内容を送信いただいても結構です。ご不明点もご相談ください。
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申込書
ジェダイト テクニカル・ミーティング(2017/4/26@大阪本社) 
●会社名・所属:
●お名前(ふりがな):
●メールアドレス:
●日中電話番号:
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【内容を一部ご紹介】
0.はじめに~こんな品質工学の指導はいらない
1.品質工学の必要性を理解し、共有するには
2.「品質工学=直交表」を払しょくするには
3.品質工学の考え方を分かりやすく伝えるには
4.機能定義やノイズ因子でつまづかないためには
5.SN比の計算やデータ解析でつまづかないためには
6.経営幹部や管理者にうまく成果を伝えるには
7.活動を継続・定着させるためには
8.ケーススタディ
※内容が若干変更なる場合があります。ご了承ください。

講師:鶴田 明三 株式会社ジェダイト 代表取締役・コンサルタント



2017/03/19

【限定6名様】テクニカルミーティング(4/7(金)@大阪本社)

*** おかげ様で、早々に定員超過いたしました(3/22 15:00)。
   次回は4/26(水)の予定です。 次回告知をお見逃しなく。***

 相原勇さんの経営者インタビューはご覧いただけたでしょうか。品質工学を専門外の方に説明するのは難しいものですね。前の投稿で、インタビューのこぼれ話も書いていますので、ご笑覧ください。

 さて、第2回のジェダイト テクニカル・ミーティングはコンピュータシミュレーションのパラメータ設計をテーマとします。コンピュータシミュレーション設計における交互作用の問題、多目的の問題、計算工数の問題を解決する最新手法をご説明します。Face to Faceを大切にしたいと思いますので、<限定6名様募集>とさせていただきます。

ジェダイト テクニカル・ミーティング

シミュレーションによるパラメータ設計で、短時間で最適解に導き、品質(安定性)も確保できる手法をご紹介!品質特性における交互作用の問題、直交表×繰り返し計算により計算工数の問題、性能とSN比の同時最適化の問題をクリアするオリジナル手法「スノコ法」とは?品質工学の基礎から復習し、少人数で和やかにディスカッション、存分にご質問できます。

この機会をお見逃しなく!





4月7日(金)13:30~16:30 ジェダイト大阪本社にて。
参加費は10,800円(税込)です。
みなさまとの積極的な議論を楽しみにしています。

詳細は、弊社ウェブサイトをご覧ください。
本ブログのお問い合わせフォームから、下記内容を送信いただいても結構です。
ご不明点はご相談ください。

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申込書
ジェダイト テクニカル・ミーティング
(2017/4/7(金)@株式会社ジェダイト大阪本社) 

●会社名・所属:
●日中電話番号:
●その他お問い合わせ事項など:

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【内容を一部紹介】
1.パラメータ設計の前に機能性評価を押さえよう
 機能性評価の必要性と手順
 機能の定義方法、ノイズ因子、エネルギー比型SN比
 ロバストネスとはどういうことか?
2.超実践パラメータ設計
 何のためにパラメータ設計を実施するのか、
 解析データの見方が重要! 解析ツールの使いどころ、
 ピンチのマル秘脱出方法(再現しない場合、利得が小さい場合)
 解析ツールの紹介
3.シミュレーション設計の問題を解く「スノコ法」
 シミュレーション設計における問題(交互作用、計算工数、多目的)
 従来の逐次法、スノコ法が解決する問題点
4.事例:高周波回路のパラメータ設計
 SN比と性能を同時達成しつつ、計算工数1/6化!

講師:鶴田 明三 株式会社ジェダイト 代表取締役・コンサルタント


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

2017/03/15

経営者インタビュー(インタビュアは相原勇さん)が掲載

 仕事を楽しむためのWebマガジン「ビープラス」さんの「経営者インタビュー」に弊社が掲載されました。インタビュアーは女優の相原勇さんです(写真あり)。
勇さんに品質工学を説明しちゃいましたよ!ぜひご笑覧を!



日本製造業復興を担う「超実践品質工学」とは


 このブログでだけお知らせしますが、実はこのインタビュー、依頼受けたのがインタビューの前々日です。「明後日、そちらに伺ってインタビューできる会社さんを探しておりまして」と会社代表電話番号にビープラスさんからご相談がありました。

 いろいろ話を聞いていたのですが、「女優の相原勇さんがハワイから日本に帰国されるので、そのときにインタビューをお願いしたい」との一言で、受けてしまいました。相原さんといえば、ピーターパン、イカ天、フレンドパークなどで活躍されて、我々と同世代の結構なアイドルだったんですよ。ま、率直に言えば、相原さんにお会いしたかったと(笑)。

 電話を切った後、受けたのはいいが、「本当に相原勇さんに、品質工学や設計・開発コンサルティングの話をするの?」と急に不安になってきました(笑)。技術者や経営者に話してもなかなか伝えるのが難しい話を、専門外のタレントさんにお話しするわけですから。

 翌日、相原さんのプロフィールが送られてきたので、何か話のとっかかりになりそうなものはないか、と見ていると、相原さんはセスナの操縦免許を持っているんですね。つまり、航空力学なんかの勉強はされているわけです。これを使おうと。

 インタビュー当日、
「相原さんはセスナ機を操縦されますね。セスナも天候や地形、機体の整備状態などいろんな条件によって飛行が左右されるでしょう。そういう条件を実験室で作り出して、実際にいじめてみることで早く製品の悪さが分かるのです。」
なんて話もしましたが、1時間の対談に対して2ページの記事ですので、この部分は残念ながら割愛されてしまいましたが。

 相原さんはベルヌーイの定理もご存じでしたし、とても好奇心が強く理解の早い方で助かりました。また、トライアスロンもされていて、それはエントリーからトレーニング・調整、本番のゴールまで期間が決まっていることと、その間のセルフマネジメントが重要な世界だと教えていただきました。それが品質工学がいうところの、「決められた期間に技術開発を行うための工夫に似ている」とおっしゃっていたのには、新しい気づきをいただきました。

 小柄で華奢なのにすごくエネルギーがあって、こちらもたくさん元気と勇気をいただきましたね。さいごは下名の著書にも興味を持っていただき、「これなら理解できそう」と1冊持って帰られました(もちろん、サインしましたよ)。

 当日はこのあたりでは珍しく雪が降る日でしたが、楽しく1時間のインタビューを受けさせていただきました。会社をやっているといろいろあって楽しいですね。

株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

2017/03/13

エネルギー比型SN 比の解説⑨

4.4. 従来のSN比の課題(4) ~計算の複雑さ(使用面、教育面での困難性)
エネルギー比型SN比は式の形から分かるように、Veの計算(そのための交互作用項への分解)や自由度の考え方が不要であるため、計算が理解しやすく簡便である。用いる数理は、2乗和の分解だけである。全2乗和STと有効エネルギー成分  Sβが求まれば、有害エネルギー成分はSTSβで求められ、SN×β等への分解は不要である。

 -------------(4.3.4)

4.4節の補足
エネルギー比型SN比において、SN比の分子のSβからVeを引く必要がないと考える数理的な理由、品質工学の思想からくる理由、実務的な理由をいくつか挙げることができるが本稿では割愛する。ここでは、健常な事例ではSβに比べてVeは非常に小さな値であるという理由だけで、実務上は十分である。品質工学会誌に掲載された報文において、標準SN比を用いた40事例を調査した結果、VeSβに対する比は平均13000にすぎない。

なお、公知の事例でも、自由度の計算や2乗和の分解の計算を間違えているものが散見される。これは、計算の複雑さ、理解へのハードルの高さに原因の一端を求めることができるだろう。なぜそのような計算方法になっているのかの理解や、後進への教育の局面で、あまり本質的でない複雑な数理の部分で時間をかけるのは効率的ではない。

4節全体の補足
 2および4で従来SN比の4つの課題とそれに対するエネルギー比型SN比における解決策、その効果を検証してきた。ここでは、エネルギー比型SN比におけるそのほかの利点を付記しておく。
 エネルギー比型SN比の他の利点として、SN比の絶対値化が挙げられる。機能の安定性の相対比較に用いられてきた従来のSN比を、ノイズ因子による傾き(入出力の変換効率、変換係数)の変化率という指標にしたのである。つまり摂氏温度のように差だけに意味があるのでなく、絶対温度のように原点や比に意味を持つ尺度となった。たとえば機能の入出力のグラフ上で、傾きの大きさの1%ばらついていれば40db10%ばらついていれば20dbとなる。そのため、機能の安定性やMTシステムの予測精度に用いるSN比に対して、「○db以上」といった目標値を設定することが初めて可能となる。また、グラフのばらつきのイメージとSN比の値そのものに対応がつくため、計算間違いがあった場合に気が付きやすいことも実務的には重要である。
 本稿では割愛したが、エネルギー比型SN比は品質工学の重要な評価指標である「損失関数」とも完全に整合する尺度になっており1)、その点でも使いやすく、品質工学の本意に沿うものである。


参考文献
1) 鐡見, 太田, 清水, 鶴田:「品質工学で用いるSN比の再検討」, 『品質工学』, 18, 4, (2010), pp80-88 .

おすすめ参考書「エネルギー比型SN比 ― 技術クオリティを見える化する新しい指標


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エネルギー比型SN 比の解説⑧

4.3. 従来のSN比の課題(3) ~個別的な計算方法~
2.4で従来のSN比が細かく分類されていることを示したが、エネルギー比型SN比ほとんどのSN比を1つの考え方と数理の中で運用することができる。なお、エネルギー比型SN比でもメニューでは「ゼロ点比例式」と「非線形の標準SN比」に分かれているが、表示される定義式Sβ/SNは同じであることが確認できる。入力信号をもとの信号値Mとするのか(ゼロ点比例式の場合)、新しい入力信号Mとして、標準条件N0の出力を用いるのか(非線形の標準SN比の場合)の違いである。
 動特性の2つのSN比(ゼロ点比例式のSN比、標準SN比)についてはすでに述べたので、静特性のSN比の場合について述べる。基本の考え方は2乗和に分解して、有効成分と有害成分に分けてそれらの比を取る」ということである。

(1)静特性のSN
(1-1)望小特性のSN
 全変動STを平均の成分Smとばらつきの成分Seに分解して考えると、望小特性ではSmSeも小さいほうが望ましいため、いずれも有害成分である。有効成分はないので、便宜上1と定義する。これを1データあたりに基準化して、以下のようになる。これは結果的に従来のSN比と同一になる。


     -------------(4.3.1)

1-2)望大特性のSN
 望大特性はその定義から、まずもとのデータyの逆数1/yを評価するというものであるので、望小特性と同一の式になる。したがって、結果的に従来のSN比と同一になる。

(1-3)望目特性のSN
 全変動STを平均の成分Smとばらつきの成分Seに分解して考えると、望目特性ではSmは有効成分で大きいほどよく、Seは有害成分で小さくなってほしいため、これらをそれぞれ1データあたりに基準化して、比をとる。


  -------------(4.3.2)


(1-4)ゼロ望目特性
 全変動STを平均の成分Smとばらつきの成分に分解Seして考えると、ゼロ望目特性ではSmは有効成分でも有害成分でもない無効成分となる。平均値は最終的にゼロに調整(校正)可能と考え、その大きさは安定性の評価に含めない。Seは有害成分で小さくなってほしい。有効成分はないので、便宜上1と定義する。これを1データあたりに基準化して、以下のようになる。従来のSN比とは、自由度(n-1)で割るのかデータ数nで割るのかの違いである。

-------------(4.3.3)


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エネルギー比型SN 比の解説⑦

4.2. 従来のSN比の課題(2)~データ数による影響~
3.3で述べたように、従来の標準SN比はnk-1(データ数-1:誤差分散の自由度)に比例する。つまり、データ数の違いによって、SN比が公平に比較できないケースがありうる。いっぽう、エネルギー比型SN比は、式の形から分かるように分子のSβと分母のSNはいずれも単純な平方和の形をしており、サンプル数分の2乗の和を表している。したがって、これらの比であるSN比はデータ数の違いによる影響を受けにくい
従来の標準SN比と、エネルギー比型SN比を比較するために、検証をおこなった。エネルギー比型SN比を標準SN比として使用する場合は、新しい信号として標準条件N0の出力をとる点が従来と同様で、式の形はSβ/SNで共通である。データの種類によってエネルギー比型SN比の形や考え方が変わらない利点については4.3で改めて述べる。

異なる2種類の引張試験装置にて接合部の機能の安定性(変位-荷重特性の安定性)を比較する場合11)を考える。この評価では、入力信号(変位)の範囲やノイズ因子の水準(8水準:4サンプルの新品条件と劣化条件)は共通であるが、引張試験装置によって、入力信号である変位の水準間隔が異なっており、信号因子水準が異なる。その結果両者で、全データ数が異なる。ただし、本節のSN比の比較検証では同一サンプル・同一試験装置において、信号因子水準数k=20の試験結果と、そこからデータを均等に間引いてk=5としたものを比較した。これは、引張試験は破壊試験のため、同一サンプルを2つの異なる引張試験機でデータ取得することはできないためである。データを図表4.2.1に示す(k=20の場合は全データを使用し、k=5の場合はハッチングのデータを使用、単位省略)。



同一サンプルでk=20の場合とk=5の場合で、従来のSN比とエネルギー比型SN比を比較した結果を図表4.2.3に示す。


 k=20の場合とk=5の場合は、いずれも同一サンプル・同一試験装置のデータであるので、入出力の傾きの変動に大きな差はない。信号水準数が変化したとしても、安定性の尺度であるSN比はほぼ同じ値になるべきである。上の結果から分かるように、従来の標準SN比の場合は、同一サンプルにも関わらず、SN比に約6dbの差が発生する。これは信号水準数(データ数)が4倍異なるためである。いっぽう、エネルギー比型SN比の場合は、差は-0.1dbと微小である。なお、エネルギー比型SN比で両者のSN比が完全に一致しないのは、間引いたデータによる影響であり、k=5でどのデータを選択するかに依存するものである。ちなみに、全く線形なデータの場合は信号水準数によって(どのデータを間引くかによって)エネルギー比型SN比の値が変化することはない。
 以上のように、従来の標準SN比はデータ数の影響を強く受けるため、実際に機能の安定性が異なる対象間で比較を行う場合は、データ数の違いによって機能の安定性とSN比の値が逆転する可能性があることに留意する必要がある。エネルギー比型SN比ではデータ数をそろえる手間は無用である。信号水準数等が異なる場合でも、対象間をより公平に比較することができる

4.2節補足
 このようなデータ数が比較対象間で異なりうるのは特殊なケースではない。以下のような例がある。
・入力信号に時間をとって、一定時間間隔でデータを取得する場合9)に、比較対象間で処理(動作)時間が異なると、データ数が変化する。
MT(マハラノビス・タグチ)システムにおいて、推定精度をSN比で評価する際に、データセット間でサンプル数が異なる場合10)がある。
・転写性の評価において、有限要素法などのシミュレーションを使用する場合、比較対象間でモデルのメッシュが異なることで、頂点数が変化することが想定される。これによって信号因子である頂点間の距離数も変化する。

参考文献
9) たとえば、矢野, 西内, 小山, 北崎, 木村:「医薬品の噴霧乾燥の品質工学による機能性評価」, 『品質工学』, 5, 5, (1997), pp.29-37.
10) たとえば、矢野,早川:「MTシステムによる地震の予測の可能性の研究」, 『標準化と品質管理』, 62, 7, (2009), pp.27-40.
11) 鶴田, 太田, 鐡見, 清水:「新SN比の研究(1), 『第16回品質工学研究発表大会論文集』, (2008), pp.410-413.

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エネルギー比型SN 比の解説⑥

4. エネルギー比型SN比の検証
4.1. 従来のSN比の課題(1) ~信号の大きさによる影響~
エネルギー比型SN比は、式の形から分かるように分母と分子の単位は同じ[y2]のため、全体として無次元であり、信号の大きさによる影響を受けない。このことを実際の評価データで確認した。

 異なる2種類のLED光源の機能の安定性を比較したデータ7)図表4.1.1、図表4.1.2に示す。定格が異なるため入力信号である電流の範囲が異なる(A社製は20mAB社製は150mA定格)。LED光源を実製品に組み込むときは、光源を複数組み合わせて、所望の明るさを得るため、異なる定格の光源が比較対象として選ばれうるのである。



以上のデータでA社、B社のLEDの機能の安定性を、従来のSN比とエネルギー比型SN比で比較した場合の結果を図表4.1.3にまとめた。

エネルギー比型SN比では図表4.1.2の傾きの変動から判断できる機能の安定性(A社が悪く、B社が良い)と一致している。いっぽう、従来のSN比ではその関係が逆転している。いうまでもなく、これは従来のSN比が入力信号データ(ここでは電流)の大きさの影響を受けているためである。A社、B社のそれぞれのケースで信号の2乗平均を比較すると、


となり、両者には64.8倍の違いがある。つまりdb単位では、10log(64.8)18.1(db)だけ、信号が小さい方(A社)のSN比が大きくなるということである。
 従来は、このように信号水準がそろわないケースでは上記のような点に留意してSN比を比較する必要があったが、エネルギー比型SN比ではその手間は無用である。信号水準範囲が異なる場合でも、対象間をより公平に比較することができる

4.1節補足
 信号因子の水準値が比較対象間で異なりうるのは特殊なケースではない。以下のような例がある。
・電力と加工量の関係のように、入出力とも計測値で、値が成り行き決まるような場合8)、信号の範囲が比較対象間で異なる場合がある。
・入力信号に時間をとって、処理(動作)完了までデータを取得する場合9)に、比較対象間で時間(信号)範囲が異なる。

MT(マハラノビス・タグチ)システムにおいて、推定精度をSN比で評価する際に、データセット間で信号の範囲・大きさが異なる場合10)がある。

参考文献
7) 三菱電機(株):「技術品質評価のための新しい評価尺度-エネルギー比型SN比-」, 『三菱電機技報』, 85, 1, (2011), p44.
8) たとえば、奈良石坪志村理寛寺:「機能性評価による小型DCモータの最適化」『品質工学』, 9, 5, (2001), pp.34-41.
9) たとえば、矢野西内小山北崎木村:「医薬品の噴霧乾燥の品質工学による機能性評価」『品質工学』, 5, 5, (1997), pp.29-37.

10) たとえば、矢野,早川:「MTシステムによる地震の予測の可能性の研究」『標準化と品質管理』, 62, 7, (2009), pp.27-40.

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エネルギー比型SN 比の解説⑤

3. エネルギー比型SN
2008年に筆者を含めた関西品質工学研究会の研究グループが提言したエネルギー比型SN比は、技術評価における新しいSN比である。機能の出力における「有効エネルギーSβ(目的に使用された成分)」と「有害エネルギーSN(目的外に使用された有害な成分)、必要に応じて「無効エネルギーS0(有効でも有害でもない無効成分、標示因子の変動)」に分解して、SβSNの比をエネルギー比型SN比と定義した。

 -------------(3.0.1)

なおここでの「エネルギー」は広義にとらえており、出力の2乗の量(2乗和)を指している。したがって、機能の出力をエネルギーの平方根(1/2乗)の単位にとると、2乗和がエネルギーに相当することになり、2乗和の分解が数学的に成立するだけでなく、「物理的にも」成立しやすくなる。
そこで、エネルギー比型SN比をηEで表すと、3.0.2のように非常に簡明な形になる。


   -------------(3.0.2)

従来のSN比と形が似ているが、これは「基準化した誤差成分の逆数」という観点ではなく、「目的に使用された有効成分と、目的外に使用された有害成分の比」という技術的な観点を明確にしたSN比である。ηEでは自由度の計算も、Veの計算も不要である。分母のSNは主にノイズ因子による影響の成分SN×βであるが、さらに偶然誤差Seを含めてもよい(そのほうが、総合評価になるし、後述のように計算がより簡単)。
 エネルギー比型SN比は、技術者が考える能動的なノイズ因子(統計的な偶然誤差でないことに注意)を導入して、その水準の端と端の差をそのまま変動と認めて記述するという考え方をとる。
簡単のためn=2水準の場合、エネルギー比型SN比の分子(有効エネルギー成分)は、

-------------(3.0.3)

である。これは平均の傾きβN02である。
一方、分母(有害エネルギー成分)は主に、能動的なノイズ因子の影響の成分SN×βであり、

-------------(3.0.4)

である。これは、平均の傾きβN0からの変化量Δβ2である。
つまり、エネルギー比型SN比とは、出力の大きさ(平均的な傾き成分の大きさ)を有効エネルギー成分、傾きの変化の大きさを有害エネルギー成分として、それらの比をとったものである。無限母集団とは結び付けず、自由度や統計的推定(-Veの処理)は不要としている。これはノイズ因子の水準値は与えるものであり、偶然はないからである。


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エネルギー比型SN 比の解説④

2.5. 従来のSN比の課題(4) ~計算の複雑さ(使用面、教育面での困難性)~

たとえば動特性のSN比の場合、偶然誤差の変動Veを計算する必要があり、そのため、交互作用項を含めた複雑な分解計算が必要である。また自由度の理解も必須となる。図表2.5.1のような、標示因子P、ノイズ因子N、信号因子M、繰り返しがある場合のデータの場合、以下の要因の変動をすべて計算してVeを求める必要がある(カッコ内は自由度)。交互作用は残差にプールできるものも多いが、そのためには分散分析が必要で、いずれにしても多数の変動への分解は必要である。




全変動:T(24)
主効果:β(1, P(1), N(1), M(2)
2因子交互作用:β×P(1), β×N(1), β×M(2), P×N(1), P×M(2), N×M(2)
3因子交互作用:β×P×N(1), β×P×M(2),
β×N×M(2), P×N×M(2)
残差:e(3)


 以下、エネルギー比型SN比について従来のSN比との比較で議論していくが、SN比の違いにかかわらず、SN比計算で使用するデータ(機能の定義:何を計測するか、ノイズ因子の定義:どのような有害要因に対する評価なのか)の質が重要である。しかし本稿ではそれは前提条件として成り立っているものとする。つまり技術的には正しい機能、ノイズ因子を用いているのに、計算方法によって、結果に違いが表れる場合を議論する。

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