2016/01/10

品質の分類(狩野モデル)その4

(つづき)

 さいごに、グラフの一番下に示した、③の曲線です。お客様はカタログに記載のとおりの「性能」を期待していますので、新品の段階や、あるいは使用しているうちに性能が低下してきたり、故障して性能や機能が維持できなくなったりすると、クレームになります。

 100円ショップの商品や使い捨てを想定した製品は別として、通常私たちが製品を使う際は、期待した年数(たとえば家電製品なら10年くらい)は新品の時に備わっていた性能は維持してほしいと考えます。蛍光灯やランプであれば明るさは変わらないでほしいし(実際は暗くなります)、パソコンの処理速度は変わらないでほしい(実際はメモリへのアクセスなどが遅くなります)と考えます。

 また劣化の問題だけでなく、使い方の違いによって性能が変化してほしくないとも考えます。たとえば、自動車のブレーキは晴れの日の乾いた路面でも、雨の日の濡れた路面でも同じように効いてほしいのです(実際は異なります)。

 このように、「新品と同じ性能を維持する」「どのような条件でも同じ性能を発揮する」というのは、言われてみればその通り=「あたりまえ」と感じます。

 このような品質のことを「あたりまえ品質」と言います(そのままですが、このネーミングはわかりやすいですね!)。変化しない、故障しないで機能するのがあたりまえなのですから、充足度が上がっても(グラフの右側にいくほど故障が少ない)、満足度が0以上になることはありません。逆にそれが達成できなかったとき(グラフの左側)に満足度は大きくマイナスに振れます。

 その意味では、マイナスしかない品質です。このような種類の品質は、魅力的品質とは逆で、誰もが欲しくないと考えている品質です(お客様によって感じ方の程度は異なります)。不具合や変化・変動は0が望ましいので、マーケティングや企画は関係なく、純粋に技術的な問題として取り扱います。

 「信頼性」や「耐久性」や「安定性」に関係する品質です。設計・開発段階での検討がまずいと、このような「あたりまえ品質」が悪い製品が出荷されて、お客様に迷惑をかけることになります。

 以上3種類の品質について説明しましたが、実は品質工学(本書の機能性評価はその大切な一部です)で扱う品質というのは、主に「あたりまえ品質」の部分です。もちろん、性能抜きにしては製品や技術の評価はありえませんので、「一元的品質」も関係しますが、性能の確保は、品質工学の評価や改善の直接の対象ではないのです。「一元的品質」は、品質工学を適用する前の、機能設計と言われる段階で事前に確保しておくべきことです(要するに、ふつうの条件でちゃんと動くものを作る段階)。

 品質工学で扱う「あたりまえ品質」は、そのような「ちゃんと動く」状態が、使用による劣化や使用条件によって左右されないかどうかを扱うので、技術の仕上げのための品質と言ってもよいかもしれません。

「魅力的品質」は品質工学では扱いません。これを「品種」の問題と言っています。

品質の分類(狩野モデル)その3

(つづき)

 つぎに、グラフの真ん中に示した、②の直線です。これは「一元的品質」と呼ばれていますが、あまりにもなじみがない言葉でしょう。これは性能を中心とした特性や、ランニングコスト、重量・大きさなど、満たされる度合いによって満足するものと考えてよいでしょう。

 みなさんパソコンを購入するときに、何に着目して選びますか。機能や性能、すなわち、CPUの処理速度、メモリやハードディスクの容量、ディスプレイの大きさ、重量、通信機能の種類、重量、OSやソフトウェアの種類、そして価格と相談といったところでしょうか。

 その場合に、カタログ(仕様表)でこれらを機種比較して、価格が見合えば購入します。予算が決まっているので、すべて最高スペックというわけにはいかず、またその必要もないので、用途やその人が重点をおく項目(速度や容量や重量やソフトウェアの種類や有無など)によって強弱をつけるでしょう。

 これらの性能を中心とした一元的品質は、あらかじめカタログの仕様書などで明示されており、価格との比較で選択できるものです。この場合、横軸の充足度(性能の高さ)と満足度の関係はどうなるでしょうか。

 性能が高いものはそれに見合う価格がついており、お客様はそれに納得して購入しています。ですので、魅力的品質のように満足度が大きく上昇することもありません。逆に性能が低い場合はそれで十分と考えて、価格の安いものを納得して選択した結果であり、性能が低いからと言ってクレームにはなりません。

 一元的品質に関する満足度のグラフは少し右肩上がりになります。この一元的品質は、競合他社としのぎを削る技術的な問題であり、またどれくらいのレベルが求められるのかといった、マーケティングや企画の問題も含んでいます。

(つづく)


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

品質の分類(狩野モデル)その2

(つづき)

 このようなことをうまく説明したのが「狩野(かのう)モデル」という、下図のグラフです。魅力的品質は①の一番上の曲線です。グラフの横軸は企画や設計がどれくらい達成できているか、物理的に満たされているかの度合(充足度)です。「魅力的品質」では右にいくほどデザインや使い勝手がよくなるということです。

 縦軸はお客様の満足度です。魅力的品質が少ない簡素なデザインや最低限の機能しかない製品でも、きちんとカタログや仕様書通りに機能してくれればクレームになることはありません。つまりグラフでは横軸で左にいっても、満足度は0付近までで下げ止まり、マイナスはなりません。

 その一方で、魅力的品質を高めた製品は、人々を魅了し、非常に高価な対価を払ってでもそれを愛用したいというお客様も現れます。現在では1000円も出せば(100円ショップでも売っていますが)、正確に時を刻む(つまり、時計としての働きが正常な)腕時計が買えますが、世の中には100万円や1000万円の腕時計の市場もあるわけです。これを可能にしているのが魅力的品質です。繰り返しになりますが、好みの問題で、あまり技術とは関係ありません(技術者は薄給なので高級品とは関係ない、という意味ではないですよ!)。

(つづく)



品質の分類(狩野モデル)その1

 1/9(土)に今年の第1回の関西品質工学研究会が開催された。午前中は総会で予算やスケジュールや新幹事などが承認された。午後は、原和彦顧問の新春特別講演、アングルトライ(MTシステムのコンサルティング)の手島さんの招待講演ありと充実のプログラムであった。また、田口玄一先生の論説の輪読では「品種と品質」についての議論となった。

 品質と品種については「狩野(かのう)モデル」で理解するとわかりやすいので、下記に解説する(現在執筆中の書き物より抜粋)。やや長いので投稿を分ける。

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 携帯ミュージックプレイヤーやタブレットコンピュータ、携帯電話などで、必ずA社の製品を選ぶというファンが一定数いますね。その製品のデザイン(外観)、お客様ビリティ(使いやすさ)、持った時の感覚、A社の製品に対する考え方…等々に魅力を感じて、多少他の部分――価格が高いことや、一部の機能がついてないこと、あるいは耐久性が弱いことなど――は目をつむってもA社の製品のお客様であることに満足を覚えるのでしょう。あるいはそのような自分に満足を覚える人もいるでしょう。高級車やバッグでも特定のブランドのファンである人がいますが、これも似たような感覚なのかもしれません。

 このような意味での品質を「魅力的品質」と言います。魅力的品質は、好みは百人百様であり、これが正解と呼べるものありません。これは、どんな製品を企画して市場に投入するか、どんなイメージ戦略で売るのか、高級感を出した方がよいのか、デザイン、風合い、使い勝手などの差別化は…といったことがポイントとなる品質です。

 どちらかというと、マーケティング部門や製品企画部門に関係がある内容で、設計・開発の方には「あまり関係ないな」と感じる分野かもしれません。魅力的品質の1つの特徴は、それを洗練、高度化させることで、大きくお客様の満足度を上げてられることにあります。

(つづく)


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

2016/01/01

【今日の言葉132】謹賀新年

40代は、夢を忘れてしまいがちな10年です。
 
「自分の子供のこと、家庭のこと、経済状況、そして、親や周囲のことで、やることがいっぱいです。(略)人生には、2種類しか進む方向がありません。ゆっくりと死ぬほうに向かっていくのか、それとも命を燃やしていくのかか、この2つに大きく方向は分かれています。」

(経営コンサルタント 本田健氏「40代にしておきたい17のこと」)

明けましておめでとうございます。
皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

昨年もいろんなことが達成できた一年でした。
まずは自身と家族の健康。
体重も61~62kgをキープ。尿酸が(なぜか)正常値に。
会社では研究所の信頼性関係のマネジャー。
グループ員も個々に成長を遂げてくれました。
また春には南九州、夏には青森と北海道に家族を連れて行くことができました。
良い季節には、足しげく山歩きやハイキングにも行って、健康そのものでした。
また北海道関係の仕事もあり、5回出張にいくことができ、
新しいプロジェクトを立ち上げることができました。
5月には日刊工業新聞さんの取材を受け、下名考案の手法が大きく紹介されました。
社外講演やセミナーも順調に実施でき、新しい方ともたくさん出会えました。

昨年は昨年。さて今年ですが、1つの目標として出版を計画しています。
詳細は今後明らかにしていきますので、少々おまちを。
現在鋭意執筆中です。1月が追い込みになります。
それとヘルスケアの目標としては、腹筋を鍛えます。

今年も次のステップに向けて、健康も増進しつつ
楽しんでいきたいと思います。

今年もよろしくお願いします。


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)