2008/07/19

従来SN比の問題点と新SN比の計算方法

 ゼロ点比例型 SN 比では、信号の大きさ(範囲)によって、SN 比の絶対値に影響が出ることが知られている。これに対して、信号の影響を補正して、誤差分散の逆数 1/(VN'/nr)とした標準 SN比では信号の大きさの影響を受けないようになった。しかし、標準 SN 比おいて信号水準数 k が変わると、品質(ノイズに対する安定性)が同じでも SN 比の値が変わってしまう。以上のような従来SN比の問題に関する検証を、「新SN比の研究(1)(2)」あたりで示した。

 これに対して今回提案したエネルギー比型の新しいSN比は、有用成分と有害成分の2乗和成分の比をとる。たとえば、全2乗和STを、感度Sβ、ノイズによる傾きの変動SN×β、それ以外の誤差変動Seに分解する(もちろん、必要に応じて1自由度単位まですべて分解してもよい)。技術の評価における有用成分がSβ、有害成分がSN×β+Se=SN'の場合、新SN比はその比をとって、Sβ/SN'となる。

 このような簡単な手続きで求めたSN比は、実は信号のスケールやデータ数の影響を受けにくく(Ve=0の線形なデータの場合はまったく影響を受けない)、またSN比の真数がマイナスになるこもない。機能性評価の場合は信号水準数 kが異なる場合には、機能性の利得の推定に問題がでる。また、パラメータ設計では実験条件ごとに信号水準数 k がそろえられない場合もある。このような場合に、新SN比の評価を行えば、かなりの部分で問題が解決すると考える。

 なお、新SN比は非常に値の小さいVeの補正をやめ、分母の分散(平均平方)を2乗和にしたものであるので、従来SN比は新SN比より、10log(nk-1)(db)だけ大きく表示されていた。信号スケールやデータ数がそろっている事例では、従来のSN比と新SN比の要因効果図は平行移動するだけで利得はほぼ同一である(Veの違いによるわずかな差が生じるが、通常は計算の最小桁以下の差である)。

※参考文献 鶴田他,「新SN比の研究(1)~(5)」,第16回品質工学研究発表大会

株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

新SN比というので、だいぶ期待していますが、このような考え方は、以前からあるのではないでしょうか。第三版実験計画法(下)p983や、半導体製造の技術開発p145の10.29式ですでに述べられています。どこか違うのでしょうか?

つるぞう さんのコメント...

匿名さん

Blogへのコメントありがとうございます。
新SN比--この名前はあまりに相対的なので、現在は「エネルギー比型SN比」とよんでいます--は、数式自体新しいものではありません。その活用に温故知新でスポットライトを当てたものです。

QES2008の発表報文「新SN比の研究(5)」にも、学会誌2010年8月号の報文「品質工学に用いるSN比の再検討」のいすれの前書きにもそのように断っておりますので、その後の部分で、現在の品質工学のSN比との違いをごり変え願えれば幸いです。

またご意見よろしくお願いします。